TeaRoomは、産業と文化の対立をなくすことを目的として創業しました。創業者・岩本は、裏千家に入門し稽古を重ねる中での経験を背景に、自身の大切にしてきた文化が衰退していく現状に問題意識を持ち、現代社会において、文化の価値を産業という側面からも再定義する必要性を感じたことが創業の起点となりました。また、茶の湯には国籍、宗教、性別、年齢の違いにかかわらず、茶室という空間では誰もが安心して心地よい時間を過ごせる普遍的な調和の力があることに気づき、裏千家第15代家元・千玄室の「一盌からピースフルネスを」という言葉に象徴されるように、規模の大小を問わず「お茶どうぞ」という一言から始まる価値観を創業以来、大切にしています。
1950年代以降、日本は高度経済成長とともに都市化・核家族化が進み、家庭で急須で淹れる伝統的なお茶の様式から、ペットボトルや缶入りといった手軽な個人消費向け飲料へと変遷しました。食文化の西洋化や生活様式の多様化により、緑茶飲料の需要が拡大する一方、リーフ茶は需要減少と価格の低下に苦しみ、生産者の収入低下や茶畑の耕作放棄化が深刻な課題となっています。こうした課題に向き合うため、創業2年目に農業法人を設立し、茶畑と工場を事業承継しました。市場の声を迅速に反映する開発・製造体制を整え、嗜好品としての多様なニーズに応えるとともに、これまでお茶との接点がなかった他産業への展開も図り、経済性と文化性を両立した持続可能なプロセスの実現を目指しています。
創業より、茶の湯という文化に深く関わる事業をしてきたTeaRoomは、長らく「文化」という言葉が伝統の固定化を意味する点に違和感を抱いてきました。日本語では往々にして「昔から変わらぬものを守る」というニュアンスが強調されますが、英訳の「Culture」には「耕す(Cultivate)」という意味もあり、未来志向で考える視点があることがわかります。日本で暮らしや行為に積み重ねられてきた文化資本について、茶の湯の思想を通じて日本文化の価値を理解し、空間や文脈、背景を理解して「設える」ことによって、新たな価値をつくり、それらを最大化する土台を日本のみならず世界で築いています。
お茶を飲む行為やそこに息づく文化は、私たちが生きる社会の基盤そのものです。これらを未来へ持続させるために、時代に則した社会づくり、そしてその仕組みづくりが求められています。お茶が産業として存続するため、業界のエコシステム再編や、日本で育まれた文化の有用な価値を現代に活かす機能を担うとともに、単独では成し得ない構想を、多様なステークホルダーとの共創を通じた連携により、より豊かで対立のない優しい世界の実現を目指しています。